「どうして私は他の人みたいに映像が見えないの?」
アニマルコミュニケーションを学び始めたばかりの方に多くい悩みです。動物から受信した電気信号は、コミュニケーターの得意な感覚に変換されます。例えば「視覚」が得意な人は映像に変換されます。ですが、得意でない感覚もコミュニケーションを重ねるうちに変換されるようになります。
携帯電話は、受け取った電子信号を「音声」に変換してくれるからこそ、私たちは相手の話が分かります。しかし、携帯電話の機種や電波環境によって、声の聞こえやすさや通話の安定感には差が出ますよね。
アニマルコミュニケーションもこれと同じです。
動物から送られた見えない信号(電波)を、自分の身体で「感覚」に変換するとき、そこには必ずコミュニケーター自身の「個性(機種の違いやフィルター)」が反映されます。
この章では、アニマルコミュニケーションの「変換」に影響を与える3つの個性(気質・能力・性格)について解説し、その偏りをどうやって補っていけばよいのかを紹介していきます。
生まれつきの「気質」 ー ペットの気持ちを受信するアンテナ ー
アニマルコミュニケーションの「変換」に影響を与える1つ目の個性は、コミュニケーター自身に生まれつき備わっている「気質(きしつ)」です。気質とは、簡単に言えば「生まれ持った、変えることのできない自分のベース(土台)」のことです。
感覚・感受性とは何か?ー 情報の受け取り方 ー
感覚・感受性とは、「外からの情報を受けて働く、心や身体の機能」を指しています。

例えば:同じ映画を見た時の感想の違い
友人と一緒に同じ映画を見に行ったと、想定します。
見終わった後、「色彩がすごく綺麗だったね!」と目に映る景色に感動する人もいれば、「あの場面で流れた音楽に良かったね」と音に心を揺さぶられる人もいます。また、「主人公の喜びが伝わってきて私も嬉しくなった」と感情を受け取る人もいます。
同じ空間で同じものを体験しても、人によって「どの感覚が一番敏感に反応するか」は生まれつき異なります。これが感覚・感受性の違いです。
アニマルコミュニケーションと優位な感覚
動物の気持ちを受信する際に最も強く影響するのが、この「感覚・感受性」です。動物から送られてきた見えない電気信号は、自分の最も優れている感覚/感受性に最初に変換されます。ここでは代表される3つのパターンについて説明します。
①「視覚」が優位な人
特徴: 伝えたい事の景色や物が「映像」として頭の中に浮かぶ。日常的に絵を描く人などに多いタイプ。
具体例:愛犬に「好きな遊びは?」と尋ねたとき、赤いボールが転がっていく様子が「映像」として見える。
②「聴覚」が優位な人
特徴: 動物の言葉が「声」として抑揚なども含めて聴こえる。日常的に音楽をよく聴く人などに多いタイプ。
具体例: 愛犬に「好きな遊びは?」と尋ねたとき、「ボール投げ!」という弾んだ声や風の音が頭の中に響く。
③「感情」が優位な人
特徴: 動物の感情が自分の身体にダイレクトに伝わる。喜怒哀楽が豊かな人に多いタイプ。
具体例: 愛犬に「好きな遊びは?」と尋ねたとき、今すぐ走り出したくなるようなワクワク感が自分の身体に広がる。
埋もれた感覚を磨き、気質の偏りを補う方法
誰にでも優位な感覚(偏り)がありますが、それは他の感覚が「無い」ということではありません。普段使っていないために「埋もれている」だけです。
①日常できる感覚のトレーニング
視覚:1点を集中して見ないで、離れている物を2点、3点と同時に見る。(空の雲を見ている時の目の使い方)
聴覚: 360°全ての音を同時に聞く。音を識別するように聞かない。
感情:例えば、 温かいお茶を飲む時など、「胸のあたりがホッと緩む感覚」など身体の変化に意識を向ける。
②動物と話す時の質問の工夫
自分の偏りを補うためには、動物への「質問の仕方」を変えるのが効果的です。視覚が苦手なら「それを見せて」、聴覚が苦手なら「どんな音がするの?」と尋ねてみます。感情面を補うなら「どんな気持ち?」と広げる質問をしてみます。話しながらでも、感覚を広げるトレーニングはできます。
学習で育つ「能力」 ー 動物と深く話すための共感力 ー
アニマルコミュニケーションの「変換」に影響を与える2つ目の個性は、素質に学習が加わって作られる「能力」です。気質が生まれつきの土台であるのに対し、能力は後から追加して育てていくことができます。
共感力(エンパシー)とは何か?
共感力(エンパシー)とは、「自分以外の誰かの感情や状況を、まるで自分のことのように想像し、寄り添う力」のことです。

例えば:小説やドラマの世界に入り込む感覚
小説を読んだりドラマを見たりしている時、主人公が悲しい目に遭うと、自分まで胸が苦しくなり涙が出ることがありますよね。共感とは、自分に起きている出来事ではないのに、主人公の感情を「リアルに体感」している状態のことです。
他者の出来事に共感しても、元の自分に戻ることができます。このように、相手の心に入り込みながらも、「自分と相手は違う存在である」と客観的に線を引く知的な能力。これが共感力です。
人間同士の共感とアニマルコミュニケーションの違い
人間同士の会話では、相手の話を聞いた後、瞬時に自分の頭の中で「推測や分析(思考)」を行って理解してから共感します。
一方、アニマルコミュニケーションにおける共感は、動物から送られてくる「見える・聴こえる・感じる」ことに思考を挟まず、ただ受け取り、味わいます。
学び始めた初期の段階では、「人間同士の会話」の様に、感覚を頭で推測してしまいます。動物との対話において「推測」は、自分に都合の良いストーリーを作る「捏造(ねつぞう)」へと繋がります。
保護犬など人間に不信感を持つ動物が、コミュニケーターと話した後に急に心を開くことがあります。彼らは「私の話を(黙って推測せずに)そのまま聞いてくれたから」と言います。動物は、思考を挟まずに感覚を共有してくれたこと自体に安心感を持ちます。
「ただ受け止める」共感力を高める学習方法
アニマルコミュニケーションにおける共感力を磨くとは、「思考を入れず、ただ感覚を受け止める練習」をすることです。
①日常でできる感覚の練習
目を閉じて視覚情報を遮断します。音楽、自然をただ感じます。例えば「食べる」「音を聞く」といった時間を持ちます。「これは何の味だろう?」と頭で考えるのをやめ、感覚だけを味わいます。
②動物と話す時の工夫
対話中に疑問が湧いたら、自分で推測せずに「どういうこと?」と直接動物に尋ねます。また、記録は単純な言葉にする。「自分が思考したこと」と「動物からの返答」を分ける習慣をつけます。
③プロを目指す方
客観的な視点を持つために、講師からのフィードバックが不可欠です。「自分は病気の話に共感するのは得意だが、亡くなった子との話は不得意」など、自分の個性を深く理解しておく必要があります。
環境で作られる「性格」 ー 翻訳のノイズになる価値観 ー
アニマルコミュニケーションの「変換」に影響を与える3つ目の個性は、気質に環境が加わって作られる「性格」で、その性格の中心にあるのが「価値観」です。これは、後に変わる可能性はあるものの、変えることはとても難しいです。
価値観(無意識のルール)とは何か?
価値観とは、性格の根底にある「こうあるべきだ」「これが普通だ」という、私たちが無意識に信じている「自分だけのルール(正解)」のことです。

例えば:色付きのサングラス
価値観とは、無意識のうちにかけている「色付きのサングラス」のようなものです。例えば「青色のサングラス」をかけていると、目の前の真っ白な壁が青く見えます。そして、サングラスのせいだとは気づかず「この壁は青い」と信じて疑いません。
「お留守番は可哀想だ」といった思い込みも、このサングラスと同じです。
アニマルコミュニケーションを歪める価値観のフィルター
動物とのコミュニケーションにおいて、私たちの「価値観」が一番の邪魔(ノイズ)になるのは、受け取ったメッセージを人間の言葉で「理解・言語化・意味付け」しようとする時です。
以下は、言語化の過程で脳内で行われていることを、まとめた表です。
【価値観が入り込む4つのプロセスと具体例】
| 翻訳の段階 | 脳内で起きていること | 価値観が入ることで起こる具体例(ノイズ) |
| ①受信する | 動物から純粋な「映像・言葉・感情」の波が届く。 | (純粋なメッセージの到着) |
| ②変換・共感 | 無意識に**「自分の価値観に合う感情」を選んで共感**してしまう。 | 例:家に来た猫の気持ち 期待や好奇心もあるのに、自分が感じやすい「不安」だけに強く共感する。 |
| ③言語化 | 人間の言葉に直す際、合わない感覚は無意識に削除する。 | 例:元保護犬の好きな散歩コース 「散歩といえばこれだろう」という自分の価値観で、一部の景色だけを選択する。 |
| ④意味付け | 飼い主に伝えるため、辻褄を合わせようと情報を歪める。 | 【例:亡くなった鳥に、新しい子を迎えていいか聞く】 「喪に服すべき」という思い込みがあると、「ダメだと言っている」と勝手に推測してしまう。 |
自分の思い込みに気づき、偏りを防ぐ方法
価値観の偏りは、「直そう(改善しよう)としても直りません。自分にそういう偏りがあると「気づく」ことで、それはノイズからあなたの「個性」へと変わります。
①日常でできる練習
自分自身のことには気付きずらくても、他者のことには気付きやすいです。他者と関わる中で、「自分とは違う価値観」を観察してみます。
②動物と話す時の工夫
最も効果的なのは、複数の人で同じ動物と話す「グループ練習」です。他の人の感じ方を聞くことで、「自分はこんな価値観(偏り)を持っていたんだ!」と、客観的に観測することができます。
章のまとめ ー アニマルコミュニケーションで自分に出会う ー
私は、月に10回以上のアニマルコミュニケーションの練習会を開催していますが、全員で同じ動物に同じ質問をしても、言葉・映像など受け取る内容が全く同じになる人は一人もいません。それは、私たちがそれぞれ異なる特性を持っているからです。
本章で解説した、動物と話す時に影響する「3つの個性」を振り返ってみます。
1. 気質(優位な感覚)のまとめ
ペットの気持ちを受信するアンテナは、生まれつき「視覚・聴覚・感情」のどれかに偏っています。自分の得意な感覚を知りつつ、日常で五感を意識して使い、質問の仕方を工夫することで、埋もれた感覚を磨き、受信の偏りを補うことができます。
2. 能力(共感力)のまとめ
アニマルコミュニケーションにおける共感とは、人間の思考(推測や分析)を挟まずに、動物の感覚を「ただ受け止める」能力です。純粋に感覚を味わう練習や、客観的なフィードバックを通して、後天的に育てていくことができます。
3. 性格(価値観)のまとめ
「こうあるべき」という無意識のルール(価値観)は、受け取ったメッセージを人間の言葉に翻訳する際、強力なノイズ(捏造や妄想)を生み出します。このフィルターを直そうとするのではなく、他者との感じ方の違いを知り、自分の偏りに「気づく」こと自体が最大の防衛策になります。
アニマルコミュニケーションを安定したものにするためには、まず「自分の偏りを知る」ことが大切です。動物の言葉を翻訳する唯一の道具は、自分自身の身体と心です。コミュニケーターは動物と話す度に、新たな自分を発見しています。
次章では、アニマルコミュニケーションにおいては「感覚を認知する」段階でどうしても入り込んでしまう「人間の脳の特性」について、脳科学の視点からさらに深く説明していきます。
