5.アニマルコミュニケーション
における「人間」の特徴

人間はあるがままを受け入れない

「私も捏造する!?」
妄想・捏造のチェックを学び始めると、こんな感想が聞かれます。普通の人たちも、皆「妄想・捏造」します。それは、人間の「脳の特性」が原因のためです。ここでは、動物の言葉を無意識に書き換えてしまうメカニズムと、純粋なメッセージを受け取るための対策を解説します。

携帯電話で通話をしているとき、電波が弱かったり、周りの雑音が大きかったりすると、相手の声が途切れるなどのノイズが発生します。

アニマルコミュニケーションで動物と話すときにも、相手からのメッセージが見えたり、聞こえたりする「認知」の過程で、私たち人間側の都合による強烈なノイズが発生します。

ここでは、なぜ私たちが無意識のうちにペットの気持ちを自分都合で書き換えてしまうのか、その「人間の脳の仕組み」を解説しながら、ノイズを防ぐための具体的な対策を紹介していきます

人間の脳は「分からない」を嫌う ー 私たちは「知りたい・理解したい」生き物 ー

私たちは本能的に「知りたい、理解したい」という欲求を持っています。「分からない」という状態を、人間の脳はとても嫌いで、なんとかして理解しようとする特性があります。ここでは、この脳の特性がアニマルコミュニケーションにどのように影響し、動物からのメッセージを歪めてしまうのか、その仕組みと対策を紹介していきます。

「分からない」を嫌う仕組みと理由

人間の脳にとって「分からない状態」とは、命に関わる「不安と恐怖」です。大昔、自然の中で暮らしていた頃、正体のわからないものに対して「何だろう?」と呑気に考えていては危険でした。そのため、脳は未知のものに出会うと、安心するために「自分がすでに持っている知識や言葉のラベル」を急いで貼り付けて、分かった気になろうとする防衛本能があります。

例えば:暗闇のロープがヘビに見える
暗い夜道で、足元に細長いものが落ちているのを見て「ヘビだ!」と飛び退いた様な経験はありませんか? 明かりを照らすとただのロープだった、というアレです。これは、脳が「よく分からないモヤモヤしたもの」を、安全を守るために勝手に「知っている危険な形(ヘビ)」に当てはめてしまった現象です。

現象:例えば「ウサギ=人参」という思い込み

動物から受け取る「映像」は、私たちが肉眼で見ているようなハッキリとした映像とは違い、不明瞭なところがあります。さらに、動物の目線で見ている景色は、人間の見え方とは大きく異なります。

ペットから「モヤモヤした映像」や「言葉にならない微細な感情」が送られてきた時、それが何なのか分からないと、脳は焦ってしまいます。そして、自分の知っている知識に無理やり当てはめてしまうのです。

具体例:ウサギに「好きな食べ物は?」と聞いた場合
⚫︎受け取った映像:オレンジ色のモヤモヤした形の物
⚫︎人間の脳の働き:「何これ?」「あっ、ウサギだから人参かぁ!」と慌ててラベルを貼る。すると、オレンジのモヤモヤした映像は人参の形になる

飼い主:あなたと話した人達が、みんな『ニンジンが好き』って言うんだけど、本当?
ウサギ:本当はみかんなの。全然くれないんだけどね。みんなオレンジ色を見ると、ニンジン!って思うみたい。ニンジンも嫌いじゃないから、まっいいかぁって否定しないの

動物からのメッセージが、人間の「理解したい(分かりたい)」という欲求によって、都合の良いように変換されてしまった例です。

対策:「分からない」状態のまま、感覚を味わう

この強烈なノイズを防ぐ対策は、「分からない状態(モヤモヤ)」のまま、「あぁ〜、モヤモヤしてるなぁ」と、ただ感じることです。

「何故?」「何だろう?」と急いで答えを出そう(言葉のラベルを貼ろう)とする脳の働きをストップさせます。

例えば「映像について」:アニマルコミュニケーションの映像は、肉眼で見ているのではなく「見えない波を脳内に映している」状態です。

「これは何?」と見ようとすると、肉眼に焦点が合ってきます。そうすると、脳内の映像を映す働きが閉じてしまいます。結果として、ますます映像は分からなくなります。「分かろう」とする気持ちを止め、分からないモノを分からないまま、ただ受け取る。これが、感覚を主役に戻すための対策です。

人間の脳は情報を「まとめる」のが好き ー 私たちは「一貫性」を求めたがる

私たちは無意識のうちに、物事に「一貫性」を求めています。バラバラの情報を整理する際、脳は不足している部分を勝手に作ったり、つなぎ合わせて矛盾をなくすために論理を作る働きがあります。

情報をまとめる過程で起きる思い込みの仕組み

人間の脳は、バラバラの点と点を見ると、勝手に線を引いて「ひとつの形」や「ストーリー」としてまとめてしまう(補完する)とめる能力を持っています。

例えば:youtubeの切り抜き動画
YouTubeで、有名人が誰かに激怒している「数秒だけの切り抜き動画」を見たことはありませんか? それだけを見ると「この人はなんてひどい人だ!」と勝手にストーリーを作ってしまいます。でも、元の長い動画を見ると、実はその前に相手から酷いことをされていて、怒るのも当然の場面だったりしますよね。脳は、与えられた短い情報(点)だけで、勝手につじつまを合わせて「分かりやすい物語(線)」を作っしまいます。

現象:断片的な情報を繋いで「物語」を作ってしまう

動物からの「言葉」の返答は、人間のように長文ではないです。一文が短く、ほとんどが「単語」や「名詞+感情」といった断片的なデータとして送られてきます。また、私たちの質問に対して、ストレートな回答が返ってこないこともしばしばあります。

ペットからこの「断片的な情報」が送られてきた時、私たちの脳は無意識に「質問に対する答え(正解)」を探し、勝手に点と点を繋いでしまいます。

具体例:犬に「好きな食べ物は?」と聞いた場合
⚫︎受け取った情報:「飼い主の笑顔」の映像 + 「パン」「美味しい匂い」という言葉(感覚)
⚫︎人間の脳の働き:質問が「好きな食べ物は?」なので、「この子は飼い主からもらうパンが好きなんだな!」と繋げて理解する

飼い主:あなたと話した人が、あなたはパンが好きだっていうんだけど、食べたことあった?

:食べたことない。毎朝ママがパンを食べているでしょ。すごく美味しそう

動物は事実(好きな情景)を伝えただけなのに、コミュニケーター側が「質問の答えとしてつじつまを合わせた」結果、事実とは違う物語ができる典型的な例です。

対策:動物に確認する

このノイズを防ぐには、受け取った情報を自分の頭ですぐに線で繋がないことです。「飼い主の笑顔」「パン」「美味しい匂い」という情報を、それぞれ独立したブロック(点)のまま、一旦テーブルの上に置いておくイメージを持ちます。

そして、その情報について、再度動物に確認の質問(再質問)をします。

「何故、ママは笑っているの?」「パンが好きなの?」「美味しい匂いは何の匂い?」

受け取った情報を「点」のまま認識し、自分の推測を挟まずに再質問を繰り返して確認していくこと。これが、脳の「まとめたい欲求」を抑えるための1つのアプローチです。

人間の脳は「見たいもの」を見る ー 私たちは「自分の正しさ」を証明したい ー

人間には「自分の考えや仮説は正しい」と証明したい心理が働いています。そのため、情報を集める際に、自分の考えに都合の良い情報ばかりを無意識に集めてしまう特性があります。

「見たいものを見る」仕組みと理由

これを心理学では「確証バイアス」と呼びます。脳は非常にエネルギーを消費する器官なので、入ってくるすべての情報を処理することはできません。そのため、「自分にとって重要だと思っていること(関心のあること)」だけをフィルターにかけてピックアップする機能が備わっています。

例え話:ペットを飼うと
例えば、猫飼った途端、急に猫に関わる情報ばかり目につくようになります。猫の情報が急に増えたわけではなく、脳のフィルターが「猫の情報」を集めるようになったからです。また、「今日の運勢は最悪」という占いを見ると、ちょっとコーヒーをこぼしただけで「やっぱり最悪だ」と、自分の思い込みが正しい証拠ばかりを集めてしまいます。

現象:強い思い込みは、愛情と結びついていることが多い

動物から送られてくる「感情」のデータには、私たちが一度に認知しきれないほど、豊富で複雑です。コミュニケーター側に強い思い込み(フィルター)があると、その複雑な感情の中から「自分の答えと一致する感情」だけを無意識にピックアップしてしまいます。

特に、「愛情」や「罪悪感」と結びついている思い込みは、動物の返答を完全にかき消してしまうほど強く、妄想となります。

具体例:亡くなった小鳥に「新しい子を迎えていい?」と聞いた場合
⚫︎受け取った情報: 「穏やか」「明るい」「温かい」「懐かしい」などの豊かな感情
⚫︎人間の脳の働き:「新しい子を迎えたら、この子は寂しがるに違いない」という強い思い込みがあると、「懐かしい」という感情の中に含まれるごく僅かな「寂しさ(哀愁)」を全てのように受け取り、「寂しがっている」と確信してしまう。

飼い主:あなたと話した人が、あなたは寂しがっていると言ってるけど、何が寂しいの?

小鳥:寂しくないよ、懐かしいんだよ。肩に乗ったり一緒にテレビを見たり。今度、家へ来る子ともこんな生活してね、って言ったんだよ。

本当は「楽しかった思い出を懐かしんでいた」「新しい子との生活を期待していた」といった情報がたくさん送られてきていても、脳のフィルターがそれらを「見えないもの」として切り捨ててしまいます。

対策:「反証する質問」と、他者との比較で思い込みに気づく

このノイズを防ぐためには、2つの効果的な対策があります。

① 自分でできる対策:反証する質問を投げる
受け取ったメッセージを覆すような質問(反証する質問)」をあえてします。

「そっかぁ、寂しいよね?」と同意する一方で、「他にはどんな事を思う?」「新しい子が来たら、どんな楽しいことがあると思う?」と、受け取ったと思う感情とは逆の角度から質問をします。そうすることで、脳のフィルターが解除され、隠れていた本当の気持ちが見えるようになります。

② 根本的な対策:他者との比較で「気づく」
最も効果的な方法は、「自分の思い込みに気づく」ことです。ですが、自分の思い込みは、一人では気づくことができません。

ですので、複数人で同じ動物に同じテーマで話す「グループ練習」が不可欠です。他の人の受け取り方と自分の感覚を比較して初めて、「私はこんな思い込みを持っていた」と気づくことができます。一度、それが「思い込みだ」と明確に気づくことができれば、同じ思い込みを繰り返すことはありません。

章のまとめ ー 自分の特性を受け入れる ー

私はアニマルコミュニケーション講座を長年主催していますが、過去15年の受講生全員に共通することがあります。それは、どうしても自分のフィルターを通してしまうということです。そして、動物の意図とは全く違う物語を創造してしまうことが、誰にでも起こり得ます。

本章で解説した、人間の脳の特性による3つのメカニズムを振り返ってみます。

1. 「分からない」を嫌う脳のまとめ
脳は未知の感覚を恐れ、知っている言葉のラベルを急いで貼ろうとします。意味を理解しようとするのをやめ、分からない感覚のまま「ただ分からないを味わう」時間を持つことで、純粋な感覚を受信できるようになります。

2. 情報を「まとめる」脳のまとめ
脳は断片的な情報から、つじつまの合うストーリーを勝手に作り上げます。情報を繋げて推測するのではなく、一つひとつの感覚を独立したブロックとして扱い、動物に直接確認を取る会話の仕方が必要です。

3. 「見たいもの」を見る脳のまとめ
私たちは自分の思い込み(仮説)に都合の良い情報だけを無意識に集めてしまいます。「寂しいはずだ」という思い込みを外し、あえて逆の角度から「反証する質問」を投げることで、思い込みのフィルターを解除できます。

動物からの純粋なメッセージを正しく認知(動物と話す)するための第一歩は、「人間には自分なりの解釈をしてしまう特性がある」ということを、受け入れることです。

私たちは動物という異種族と深く出会うことで「人間ならではの特性(思考のクセ)」に気づく体験をします。 人と動物が話すということは、自分が人間であることの自覚から始まり、異種族との境界線が消える一体感へと繋がり、そして再び人間に戻った時に、自分の個性に深く気づくという体験です。

次章では、これまで解説してきた「不確かさ」をもつアニマルコミュニケーションを、あえて今の時代に勧めることの意義について、人間と動物の違いから深く考察していきます。