7.アニマルコミュニケーション
のギフト

動物と人間の新しい生活

「あぁ、そっかぁ」
動物と話していると、意味や理屈は分からないのに、ただ納得し心が頷く様な体験をよくします。動物と話すことは、ただ情報を得るだけでなく、お互いを「個」として認め合う始まりです。コミュニケーションを通じて変わっていく、動物と人間の新しい生活の形をご紹介します。

動物の気持ちが知りたくて始めたアニマルコミュニケーションが、いつの間にか「私たち自身の生き方」を根本から変え、救ってくれることがあります。

アニマルコミュニケーションへの関心は、ここ15年で大きく変化し、今や特別なことではなくなりつつあります。実際、私の元を訪れる多くの方々から、「動物の行動が変わった」というだけでなく、「私自身の生き方や価値観が変わった」という声をいただきます。

この章では、アニマルコミュニケーションが私たちの日常や社会にどのような変化をもたらすのか。そして、動物から受け取る「人生を豊かにするギフト」についてお話しします。

アニマルコミュニケーションがもたらす社会の変化

動物と話す人が増えることで、その変化の波は個人の生活の変化から、更にペットを取り巻く社会や産業へと確実に広がっています。

「飼い主の好み」から「動物の心地よさ」へ変わるサービス

これまで、ペット産業のサービスや商品は「飼い主がどう思うか(人間目線)」が基準でした。しかし今、主役が「動物」へと変わりつつあります。

例えば、犬の意見を聞いてペットサロンを選ぶ
我が家では犬たちの「シャンプーの匂いがくさい」という意見を聞いて、いくつかのサロンに行って彼らが「ここが良い」と言うサロンに変えました。また、猫が安心して留守番ができるように、アニマルコミュニケーションができるシッターを選ぶ飼い主さんも出てきています。

受講された方の中にはペット用品メーカーで、実際に猫と話しながらオモチャを開発している方もいます。企業が「動物の本当の声」を商品開発に取り入れる。動物が本当に心地よいと感じるサービスが提供される時代が、すぐそこまで来ています。

心のケアを担う「かかりつけアニマルコミュニケーター」

日常的にペットと話す飼い主が増えるにつれ、コミュニケーターにはより高度な専門性が求められるようになります。

例えば、犬や猫の保護施設でのアニマルコミュニケーションの活用
人間に不信感を持っていた動物が「初めて人が私の話を黙って聞いてくれた」と心を開き、新しい家族との距離が縮まるケースが増えてきています。アニマルコミュニケーションの最も効果のある活用法です。

一般の家庭の特別な事情のあるペットや、心に深いダメージを負った保護動物のケアや、動物病院での入院中のメンタルケアなど、心のケアを専門に行う「かかりつけアニマルコミュニケーター」が、社会のインフラとして活躍する日が来ると、思われます。

人間と動物の関係の変化 ー 真のパートナーシップへ ー

人間と動物、種の違う生き物が同じ屋根の下で暮らすということは、お互いのルールの違いに直面する連続です。対話(共感)を通して、私たちの関係はどう変わっていくのか、既に始まりつつある人間と動物の新しい関係についてご紹介します。

問題行動は、お互いを知るための機会になる

いわゆる「問題行動」とは、人間社会のルールに反していて、飼い主側が「困る」と感じる言動のことで、日常的に話せる飼い主たちは、ペットと共に「なぜ吠えちゃうの?」と原因を探り、一緒に対処法を考えます。

例えば、我が家の犬の散歩中の「吠え」について
オヤツ作戦は失敗だったね」「もっと早くサインを出した方がいい?」と修正し、「このくらいで良しとする?」「へぇ〜、完璧目指すの!」と、一緒に努力する感じで、取り組んでいます。

愛犬と私は、「問題行動の改善」というテーマを通して、お互いのことを深く知ることに挑戦しているような感じです。失敗も成功も、そのプロセスを共有することで、二人の関係は「主従」から、対等な「パートナー」へと強固になっていきます。種の違いを学びながら、折り合いをつけて生活していく。それが異種族と暮らす醍醐味だと感じています。

ペットが愚痴をこぼせる「隣のおばさん」コミュニティ

プロのコミュニケーターが専門家だとしたら、動物と話せる飼い主の友人は、ペットにとって「近所の気のいい、隣のおばさん」のような存在です。

隣のおばさんは、飼い主(ママ)には直接言えない話をウンウンと聞いてくれます。

例えば、友人の家のインコは「おばさんとは、なんでも話せる」と言います
おばさんは「じゃあ、おばさんからママにうまく伝えておくね」と言ってくれたり、時々は「でもね、それはママがちょっと可哀想かもよ」とお説教したりします。おばさんはこのインコにとって、息抜きができる心強い味方です。

現在、私はそういったコミュニティを試行的に作っています。うちの犬たちも、私以外のコミュニケーター(おばさん)に「うちの母さん、すぐにダメダメって言うんだよ」と愚痴をこぼしています。動物と話せる人が増えれば、動物たち自身が相性の良い相談相手を見つけられる、人間の世界も動物の世界も広がるんじゃないかと、思っています。

これからの私たちが向き合うこと ー 動物から受け取るギフト ー

私たちは動物との話(共感)を通じて、人間が忘れてしまった大切なことを思い出させてもらいます。最後に、動物から受け取る3つの「ギフト」をご紹介します。

ギフト① 価値観の違いを認め、違うままで隣に座る

多頭飼育崩壊の現場からやってきた、うちの猫。私は、彼らが置かれていた悲惨な環境を思い、元の飼い主の言動に長年強い「怒り」を感じていました。ですが、ある時、猫が私に言ったのは私の価値観を覆すことでした。

「母さん、あの人は無知だっただけなの。許してあげて」

私には「こうあるべきだ」という正義感(価値観)があり、そこから外れていることへの「怒り」がありました。ですが、動物は「私の価値観」を持っていません。現実の出来事を受け入れる力があります。ですので、執着や過去に対する憎しみがないのだと思います。

人間である以上、自分の価値観(我)はあり、それがその人を形作っています。ただ、「私は私、この子はこの子」と違いを認め、「必ずしも一つの考えに統合する必要はなく、違うままで隣に座るという関係性が良いのだと思います。これは人間関係にも通じることだと思いました。

ギフト② 感覚を働かせ、「今、ここ」を感じる

亡くなった愛犬に、「なぜ、私のところへ来てくれたの?」と尋ねたコミュニケーター。彼女はオンライン上にたくさんある「生まれ変わりの使命」や「前世からの約束」といったドラマチックな答えを期待していました。ですが、犬の返答はシンプルで全てが含まれていました。

「あなたと、ただ一緒に暮らしたかった」

この答えの中には、「ご飯を待つワクワク感」「一緒にテレビを見て笑う時間」「いつもの散歩道を歩く風の匂い」など、見過ごしがちな「日常のすべて」が含まれていました。

人間は常に思考を働かせ、未来の目標に向かって生きていますそのため、動物たちが瞬間瞬間をどれほどキラキラと生きているかを見落としてしまいます。目の前の物と関わり、感覚を動かし「ご飯っていい匂いだな」「風が気持ちいいな」。動物の「今、ここ」を感じる力。それが、彼らが教えてくれる2つ目のギフトです。

ギフト③ 命の尊厳と、それぞれの「幸せの形」を受け入れる

長い間、ボランティアさんに餌をもらって外で生きてきた老猫。最後くらいは温かく柔らかいベッドで看取りたいと、ボランティアさんが自宅へ連れ帰りました。ですが、猫はご飯も薬も拒否。ご飯を食べるように説得した私にその猫が伝えてきた事は「生き方」でした。

「最後の呼吸まで、生まれ育った外がいい」

私たちは本能的に小さな命を守ろうとし、温かさを与えることが「幸せ」だと信じています。同時に、私たちは動物の意思を尊重したいと考えています。この思いが矛盾を生み、私たちは葛藤します。

人間と関わる動物が、どのように生き、どのように死ぬか。現状は人間の手に委ねられています。だからこそ私たちは常に、「これは私のエゴ(自己満足)ではないか?」と自分自身に問い続けなければなりません。「動物の心も、身体も、生命も、すべてその動物自身のものである」。その当たり前の尊厳を侵さない勇気を持つことが、彼らから受け取る最大のギフトです。

章のまとめ ー 動物と私たちは、違うままで横に座る ー

この15年、アニマルコミュニケーションはゆっくりと広範囲に広がりました。ペット産業という目に見える形から変化を起こし、サービスの主役を「人間」から「動物」へと引き戻します。そして、私たち飼い主は、動物たちとの日々の暮らしの中で無自覚に多くの恩恵を受けています。

本章で紹介した、アニマルコミュニケーションのギフトについて振り返ってみます。

1.動物へのギフト
アニマルコミュニケーションが認められるはじめ、動物を主役にしたサービスや動物の心のケアを担う専門家が生み出され、社会の動物への意識が変わりつつあります

2.ペットと飼い主の関係へのギフト
ペットと飼い主が、話し合い、試行錯誤し、失敗しながら、折り合いをつけ一緒に生活を作っていく関係が作られます。そして、その関係は、地域全体へ広がりをみせています。

3.人間へのギフト
異種族と共感できることそのものが、何よりもの私たちへのギフトだと思っています。そして、そのことが「感覚」を取り戻すことになり、見えなかった様々な価値に気づく原動力となります。

動物たちの感覚を共有することは、頭の働きを最優先する現代社会の中で、私たちが置き忘れてきた「感覚」を呼び覚ます作業です。「思考」と「感覚」のバランスが取れたとき、私たちは周囲の流れに翻弄されることなく、自分らしさ(個性)を選択できるようになります。

動物と話すこと。それは、動物を知る(共感する)喜びであると同時に、私たち人間が、より人間らしく、生きていくための「道しるべ」なのかと、思っています。

アニマルコミュニケーションを通して、自分以外の生き物のルールや価値を受け入れる経験が、将来、人間同士も動物と人間も「違うままで隣に座る」そんな関係が築かれることを願っています。